AIは原始の火では？というお話

AIの話題が飛び交わない日はありません。
「AIがコピーを書く」「画像を生成する」「動画を作る」──そんな見出しが日々流れ、広告業界も例外ではなく、まるで“火をつける競争”のように新しいツールや技術が登場しています。でも、私たちは思うのです。
「火の付け方」に踊らされすぎていないか？と。

私たち人類が「火」を手に入れたとき、それは文明の幕開けでした。
調理を可能にし、闇夜を照らし、寒さをしのぎ、生活様式を根底から変えた存在。
一方で、扱いを誤れば、命や家を焼き尽くすほどの危険も孕んでいました。

重要なのは、「火を持っていること」ではありません。
「火をどう使うか」が、文明の分かれ道だったのです。

そして今、AIという火を前にして、私たちは同じ局面に立っています。

どんなAIツールを使うか、よりも「何のために使うか」

広告業界でも、AIを活用した制作の自動化や効率化が加速しています。
当社でも一部の工程でAIを導入し、業務の合理化に役立てています。

ただし、それは目的ではなく手段です。
広告の本質は、「伝えるべき価値を、正しく、美しく、人の心に届く形にすること」。
AIはそのための道具の一つであり、ツールに使われるのではなく、主体的に使いこなす姿勢が求められます。

「AIの提案は速い。けれど、それを選ぶ理由は人が決める」。
これは、私たちが日々の制作現場で実感していることです。

一見魅力的なアウトプットも、ブランドの文脈や世界観と合っていなければ意味がありません。
その微妙な“違和感”を察知し、調整できるのは、人の目と感性です。

だからこそ、最終的な「判断」には、いまだ人の役割が不可欠なのです。

AIを恐れる必要はありません。
しかし、煽る言葉や過剰な流行にただ乗るのではなく、「自分たちの目的に、どう意味ある形で活かせるか」を冷静に見極める視点が、今こそ必要だと思います。

AIは、まさに現代の“火”。
便利で、強力で、未来を照らす可能性を秘めた技術です。
だからこそ、「どう燃やすか」ではなく、「何を温め、何を照らしたいのか」が私たちに問われているのです。

私たちは、AIを過剰に礼賛するのでも、無闇に否定するのでもありません。
あくまで、クリエイティブの本質を見失わず、AIという“火”を冷静に扱うこと。
それこそが、これからの広告制作において最も求められるスタンスだと考えています。